給料アップ。会社への投資とのバランス。

経営者イチロウ

アシスタントから今のサロンに入社したイチロウは

入社20年目の去年、

社長からサロンを譲り受け経営者になった。

社長からサロンを譲り受けた背景にはいろいろあったが、

それはまたの機会に譲ろう。

シリーズとなったイチロウ奮闘記。

経営者となったイチロウの日々をちょっと覗いてみよう。

イチロウの悩み

イチロウは悩んでいた。

もう一年はずっと考えているが、

答えはどの教科書にも載っていない。

正解はないのだ。

自分で見つけ出さなければいけない。

イチロウの悩みの種、

それは

給料について、だ。

賃金について

評価制度について

就業規則について、、

ありとあらゆる本を読んだ。

どの本にも最もらしい事は書いてあるが、

結局はイチロウ自らが決めるべき大事な仕事だ。

先代の社長にも相談した事はあるが、

イチロウが決める事だよ、と背中を押された。

電卓も何百回と叩いた。

計算しては消し、

計算しては消しを繰り返していたら、

ACの文字が掠れてきた。

それくらい叩いた。

給料は上げたいと思っている。

下げるつもりは全くない。

年間720万円の利益をどう捻出するか

主に席を置いている店舗は5名ほどの規模だが、

グループ全体ではスタッフ数は約30名。

一律2万円アップさせたとして月に60万円の人件費増。

年間で720万円にも及ぶ。

720万円の利益を新たに出すための売上は

その何倍も必要だ。

2倍？

いや3倍？

そういう試算はまだイチロウには難しい。

だが、

720万の利益を新たに捻出する方法を考えなければ

給料アップした事によって赤字になる可能性すらある。

給料アップして赤字転落。

経営者としては失格だ。

問題は、

給料が上がったからといって

売上が上がるかどうかはわからない事だ。

むしろ、

利益は確実に下がるだろう。

今期が調子がいいから

来期も調子がいいとは限らない。

未曾有の新型ウイルスが

世界を覆う事だってあるかもしれない。

そうしたら人々は美容院どころではなくなるだろう。

平和な日常がずっと続くとは限らない。

慣れて当たり前になる事を前提に

ともわれ、

スタッフに喜んでもらいたいという気持ちがいちばん大きい。

給料アップした直後はモチベーションの向上が期待出来る。

経営者としても嬉しい瞬間だ。

しかし

それは長くは続かないのだ。。。

持って3ヶ月。

人は慣れるのだ。

慣れて当たり前になる。

上げた後の水準に。

だから

モチベーションアップによる売上アップも

長期では期待できない。

正のサイクルを回すため

原点に戻ろう。

有難がられるために給料アップをしたいわけではない。

みんなとより豊かになるために給料アップをしたいのだ。

うーーーん。

悩む。

どうしたらいい？

どうすればみんなで幸せになれる？

イチロウは毎日この言葉を繰り返した。

会社の利益も維持しながら、

社員にも豊かになってもらうには？

どうすれば、

どうすれば、

どうすれば、、、。

この繰り返し。

これが一年続いている。

煮詰まったイチロウは

会社にとって利益とは？

そこから考えてみる事にした。

バランス

会社とは営利団体であり、

利益を出して国に税金を納める事が求められている。

利益を出せない会社は

世間に必要とされていない会社、、

と言われてしまう世界だ。

なにがともわれ

赤字ではマズイ。。

給料も増やしたいが

出店費用

改装費用

新商品導入費用

集客費用などなど、

お金がかかる事は山ほどある。

魅力的なサロンにする為には

お金はいくらあっても足りない。。

お金は

まわりまわって

自分のもとに帰ってくるイメージ。

給料を生んでくれる会社を盤石にし、

より大きく成長させることができれば、

帰ってくるものも大きくなる。

言い換えれば、

利益を会社の成長に投資しなければ

その会社は長くは続かない。

尻すぼみに

衰退していく。

まずは利益を生んでくれる会社を

強くしていく必要があるのだ。

イチロウがこのサイクルを理解できたのは

ほんの最近の事だ。

昔は、、

自分の給料の事ばかり考えていたな。

立場が変わると考え方も変わるんだな、

と思った。

思えば先代の社長は、

毎年なんらかの新しい事をやっていた。

そこにお金を使っていたのか。。

と同じ立場になってやっと気付いた。

バランス。

この一言だ。

より多くの給料を払い、

より多くの利益を出せる会社になる。

これが理想のゴール。

イチロウはそれを目指している。

正解がわからない事を進めていくのは

とても勇気がいる。

でも、志しはただひとつ。

みんなで豊かに。

そう思って

イチロウは今日も電卓を叩く。

新米経営者イチロウの奮闘記は

まだ始まったばかり。

…そう、ここから。